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第2回
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第2回 血管の内側から診断・治療する――血管カテーテル
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X線の画像を見ながら治療

カテーテルの挿入方法

――でも、どのようにしたら患部までカテーテルを到着させ治療することができるのですか?

皆さん、そのことをとても不思議に感じられるようですね。実際に一般的な手技を見てみましょう。

  1. まず、手首か太ももの付け根の部分に局所麻酔を行った後、専用の針で血管に穴をつくり、
  2. ガイドワイヤー(細く柔らかい針金のようなもの)を入れます。
  3. 次にガイドワイヤーに沿わして挿入シース(管)を血管内に入れ穴を広げます。
  4. これでカテーテルを入れる入り口ができたことになります。
    ※挿入シース(カテーテルを入れる入り口)でつくった穴は出血しないような工夫がされています。
  5. 次に、血管内に造影剤を注入し、X線写真で血管の様子を見ることができるようにします。造影剤は時間とともに尿として代謝、排出されていきます。医師はX線で血管とカテーテルの状態を常に監視しながら治療を行います。
  6. 挿入シースの中にカテーテルとガイドワイヤーを入れていきます。ガイドワイヤーの先端は少しカーブしていて、血管の分岐点では先端を回転させることで目的とする血管へと導くことができます。医師はX線透視モニターの画像を見ながら、ガイドワイヤーを入れていきます。
  7. 患部にたどり着いたら、そのガイドワイヤーに沿って治療用のカテーテルを入れていきます。バルーン(風船)によって狭くなった血管を広げる場合は、先端にバルーンのついたカテーテルを入れていき、患部にたどり着いたら、そこでバルーンをふくらせます。するとふくらんだバルーンにより、狭くなった血管は押し広げられ、血液の流れは改善します。その後カテーテルを抜いて終了です。  
 
狭くなった血管を押し広げる方法

また、バルーンで広げた箇所に「ステント」という細い金属の網を留置して、再び血管が狭くならないようにする方法や、狭くなった血管の内側を削る治療方法もあります。

さらに、脳動脈瘤がある場合は、そのこぶの中に細い金属製のコイルを入れて破裂しないよう治療することもおこなわれています。 この方法を、脳動脈瘤コイル塞栓術と言います。

脳動脈瘤のこぶをコイルで充填する方法
PTCA バルーンで押し広げる方法
ステント植え込み術 金属の網を植え込む方法
ロータブレーター(TM) ダイヤモンドの付けられたバーで血管内の狭くなった部分を粉砕する方法
脳動脈瘤コイル塞栓術 カテーテルからコイルを押し出して、こぶの中を細い金属のコイルで充填する方法
※ロータブレーター(TM)は、Boston Scientific Corporationのトレードマークです。

 

――ガイドワイヤーやカテーテルはヌルヌルとしているのですね。

そうです。なるべく血管になじみ、すべりやすくするために、水に濡れるとまるで「うなぎ」のようにヌルヌルするような素材を使っています。また血管の中で折れたり、血管壁を傷つけたりしないよう、丈夫だけども柔軟性のある素材を使っています。これらの技術革新は日々行われ、「血管カテーテル」が登場して約40年の間に、より細く、より柔軟性の高いものへと進化を続けているのですよ。細いものではわずか直径約0.25mmの血管カテーテルもあります。

――カテーテルの太さや先端の形にも、いろいろあるのですね。

治療の箇所により血管の太さが異なるため、用いるカテーテルの太さも変わってきますし、人それぞれ血管の形や分かれ方が異なるので、ガイドワイヤーの先端も異なってきます。患者さんに合ったカテーテルを選ぶことが必要です。

さまざまな形状の血管カテーテル





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患者さんのからだに負担の少ない治療方法

 

また、先ほどは「血管の詰まった箇所を開通する」ためのご説明をしましたが、「血管をわざと閉じて、酸素や栄養の補給を止める」という治療方法にも使われているのですよ。そのためのカテーテルもあるのです。

たとえば「子宮筋腫」という、子宮の筋肉が異常増殖してしまった病気の場合、造影剤を注入して血管の様子を見ると、筋腫のまわりに新たな毛細血管が生まれて筋腫を育てているのがわかります。それらの血管への酸素と栄養補給を断ち切れば、筋腫は成長できなくなり小さくすることができます。そこで、「血管カテーテル」でそれらの血管にゼラチン状の詰め物を注入し、筋腫を養う血管への入り口をふさぐのです。すると、筋腫は栄養を絶たれるため、どんどん縮小します。

カテーテルの挿入方法

――「兵糧攻め」ですか。それもまた「発想の転換」ですね。

がんを養っている血管をふさぐ方法・出血している箇所を止める方法そうですね。この方法は日本において肝臓がんの治療で初めて行われ、「肝動脈塞栓化学療法」の草分けとなっています。ゼラチンで栓をしているので、いずれ吸収されて血管は開通しますが、一方腫瘍は死んでしまうという、画期的な治療法です。交通事故などで破れてしまった血管に内部から詰め物をして出血を止めるという方法にも用いられています。

また、たとえば不整脈のように、心臓を規則正しく動かす電気信号の流れが乱れた場合、先端に電極のついたカテーテルで乱れを起こす部分を特定した後、異常な電気の流れる道を電気で焼き切る「カテーテル アブレーション」という治療方法もあります。

――外科的な手術をしなくても済む治療方法ですね。

以前は冠動脈(心臓に栄養と酸素を供給している血管)が閉塞すると、胸を開いて心臓を一旦止め、人工心肺装置を使用して血液を循環させながら、血管のバイパスをつくる手術が中心でした。「血管カテーテル」による治療が可能となって、このような大手術をしなくてもよくなり、入院期間も短く済むなど、患者さんへの負担がより少なくなりました。麻酔も局所麻酔で済み、患者さん自身の痛みに耳を傾けながら治療できる点もメリットの1つです。もっとも「血管カテーテル」も万能というわけではなくて、閉塞部分が多いなどの場合は、手術による治療の方が良いこともあります。







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