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第8回 PAGE1
「きこえ」をサポートし、積極的な生き方を応援――補聴器
2008年4月1日掲載 

補聴器は自分にとってはあまり関係のない医療機器かも、とボクは思っていました。しかし、人は誰しも年を取ると聴力が下がるのだそうです。衰えた聴力を補い、積極的で前向きな人生を送れるようにサポートするのが補聴器の役割。技術もデザインも進歩し、生活を楽しむために必要な機器になっています。どんな機器なのか、どのように進歩してきたのか、補聴器を開発している方や普及・啓発を担当している方のお話を聞きました。

いき・れん君の画像

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「聞こえること」で、前向きな気持ちに

――人は誰しも年を取ると聴力が下がると聞いて驚きました。

「聞こえること」を私たちは「きこえ」と呼んでいますが、人間ならどなたも加齢とともに、「きこえ」の力は下がっていきます。個人差はありますが、だいたい40歳を過ぎるあたりからでしょうか、特に高い音が聞こえにくくなる傾向があります。

60歳代になると会話の聞き取りに大切な周波数範囲の中で2000Hz以上の音をキャッチしにくくなる方が多いですね。音は聞こえるけれども、言葉として聞き分けにくくなるのです。その理由をご説明するために、まず「きこえ」のしくみについてお話しましょう。

――そういえば、どうして音や声が聞こえるのか、不思議ですね。

音の伝わりには空気伝導と骨伝導があります。先ず、空気伝導について説明します。

音や声は空気が振動することで伝わるんですよ。厚いガラスがお互いの間にあると空気の振動が伝わらず、口はパクパクしていても声は聞こえないですよね。空気の振動が外耳道を経てまず鼓膜を振動させますが、この時に外耳道共鳴により増幅されます。そして、鼓膜の動きが中耳の3つの耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)を伝わる間にテコの作用で更に増幅され、蝸牛管(かぎゅうかん)の中にある有毛細胞に伝えられます。有毛細胞は周波数別に反応する聴細胞で、何千という数があり、広範囲の周波数の音をキャッチできるようになっています。そして、有毛細胞が受けた振動を電気信号に変えて、聴神経を通して大脳の聴覚野へ送り、そこで初めて音として感じ、言葉として理解することができるのです。

耳ときこえのしくみ

もう一つは骨伝導といって、声帯などの振動が頭蓋骨を経て、直接蝸牛管の中にある有毛細胞に伝わるものがあります。この骨伝導は意図的に起こさなくても日常起こっております。例えば自分が聞く自分の声は空気伝導(気導)音と骨伝導(骨導)音が一緒になった音です。従って、録音した自分の声を初めて聞くと、強い違和感を覚えるのは、録音機器のマイクは空気伝導によって伝わる音のみを録音するからです。

――では、音の振動を受ける鼓膜がなくなったら音は聞こえなくなるのですか?

空気伝導で伝わる音は聞こえなくなります。耳はすべてがうまく連携して音や声を聴いているので、そのどこかがうまく働かなくなると、難聴になってしまいます。

難聴になる原因は、疾病や事故、薬の副作用、加齢などさまざまで、また、どの部分が働かなくなったかで聞こえにくさやその程度が変わってきます。例えば、加齢による聴力の衰えは、蝸牛管の中にある有毛細胞という音を感じるセンサー部分の機能低下とこのセンサーから入った音を最終的に言葉として理解する脳の聴覚野の衰えによる機能低下の2つで引き起こされます。そして、これらは老化現象ですので治療は現在のところ難しいということになります。現時点では特効的な治療はありませんので、衰えた機能は別の何かで補う、つまり補聴器を使うということになります。


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「きこえ」を維持することで楽しい人生を

――ボクのおばあちゃん、最近テレビの音を大きくするようになって、聞こえにくくなっているのかな? と思うのですが…。

「テレビの音が聞こえにくくなった」ことで聴力が低下したことに気付く方は多いですよ。また、「電話での会話が聞こえにくくなった」「家族が呼んでも気付かなかった」「電車のアナウンスが聞こえにくくなった」ことで、補聴器の相談にいらっしゃる方が多いですね。あるいは、ご本人はまったく気付かず、周囲の方が「最近テレビのボリュームが大きいから」とお気付きになるケースも少なくありません。また、人間ドックの聴力検査で聴力低下が発見されることもあります。徐々に進行するのでなかなか気付きにくいのです。

又、聴力低下が軽い場合、テレビの音を少し大きくすれば聞き取れるので、本人は聞こえにくくなったことに対し、余り深刻に考えないケースも多くあります。この結果、聴力低下が進行し相当悪くなってから初めて難聴に気づき、深刻に悩むとも言われています。そして、友人と会っても、自分が聞こえにくくなっていることが言い出せず、また、会話の中で何度も聞き返すことができなくて、だんだん出不精になる方もいらっしゃるのですよ。

「きこえ」は、前向きな生き方をするためにとても大切なものです。聴力が衰え始めた頃から上手に補聴器と付き合って「きこえ」を維持することで、楽しい人生を送られることをお勧めします。聴神経や大脳の聴覚野は、日々音声の刺激を受けることで鍛えられていますから、難聴になって刺激が少なくなると能力が下がっていきます。

特に、難聴がかなり進行してから、つまりセンサーや聴覚野の機能が相当衰えてから、補聴器をお使いになるケースが多いので、補聴器を使って、言葉を聞き、これを理解する訓練が、進行度によって、より多くの期間が必要となります。視力の場合はメガネをかけるとすぐにはっきり、くっきり見えるようになりますが、聴力の場合は大変感覚的なものですので、補聴器の効果を得るには時間をかけてリハビリをするというプロセスが必要となって来ます。

難聴が進行してから補聴器を装着すると聴神経や聴覚野が感覚を取り戻すのに時間がかかりますから、適切な時期から補聴器とのお付き合いを始められて、徐々に慣れていただくのがいいのです。「おやっ?」と思ったときに、まずは耳鼻科医に相談し、お気軽に補聴器専門店をお訪ねください。

ただし、突然聞こえなくなった、耳だれや耳の中の痛みがある、めまい、頭痛、湿疹などがある場合は、単なる難聴ではなく何らかの疾病を引き起こしている可能性がありますので、補聴器を使う前に必ず耳鼻科医の診断を受けてください。

――長寿の時代ですから、長い老後を前向きに過ごすためにも、はっきり聞こえることが大事なのですね。


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