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第16回 PAGE1
白内障になっても再び見えるように――眼内レンズ
2010年6月16日掲載 

先日、まもなく80歳になる祖父が白内障の手術を受けてきました。家に帰るなり「おぉ、このテーブルクロスは白かったのか。ずっとクリーム色だと思っていたぞ!」と驚き、「テレビのテロップが読める!」と喜んでいます。「よく見える」ということがこんなに人を明るく、前向きにさせるものなのかと、ボクも驚きました。白内障の手術では小さなレンズを目の中に埋め込んだと聞き、その「眼内レンズ」について日本眼内レンズ協会とメーカーの方々に伺いました。

いき・れん君の画像

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レンズが白く濁る疾患「白内障」

――人は年をとると必ず白内障になるものなのですか?

残念ながらそうです。誰にでも白髪やしわができるように眼も白内障になるのです。人の目の「水晶体」は、眼の中にある透明なレンズでピントを合わせる役目を果たしています。「白内障」は水晶体の透明な組織が白く濁る疾患です。進行度には個人差がありますし、本人が気付いているかは別として、65歳以上の約7割、80歳以上のほぼ100%は「老人性白内障」にかかっていると言われています。濁りが少なければあまり視力に影響がありませんが、白濁してしまった組織を元に戻す薬や治療法はまだ見つかっておらず、ものが見えにくくなったら濁った水晶体を取り除いて「眼内レンズ」に置き換える「白内障手術(水晶体再建手術)」を行うしかありません。いき・れん君のおじいさんはこの手術を受けられたのですね。

見え方のしくみ・白内障になると…

――手術後はちょっと元気になりすぎちゃって困ってます(笑)。祖父の友人も手術を受けたそうですよ。

高齢化社会が進んで白内障になる方が増え、日本では現在、年間100万件以上の手術が行われるほど、「白内障手術」はポピュラーなものになっています。1985年に眼内レンズが医療機器として認可され、その後白内障手術が保険適用されてからは、日本では白内障を原因とする失明はほとんど起こらなくなりました。

けれども、発展途上国ではまだまだ失明の原因のトップが白内障であったり、白内障の解決方法が「白く濁った水晶体を針で突いて眼底に落下させる方法」だったりします。

――水晶体がなくなっても、ものが見えるのですか?

ピンホールカメラのようにレンズのないカメラみたいな状態になるので、焦点の調整はできず極度の遠視になりますが、見えるようにはなるのですよ。手術後はぶ厚いレンズの眼鏡をかけて近くも見えるようにします。実は、戦後までは、白内障手術は水晶体を中に押し込むか、取り除くかの方法しかなかったのです。ここで少し歴史を振り返ってみましょう。

 
学生の一言から生まれた「人工のレンズを入れる方法」

「白く濁った水晶体を針で突いて眼底に落下させる方法」は古代インドで始まったといわれ、戦後まで「水晶体を取り除く方法」とともに長い間続けられてきました。現在のような「人工のレンズに置き換える方法」を考え出したのは、イギリスのリドレーという眼科医です。リドレー先生が学生に「水晶体を取り除く方法」を教えているとき、学生が何気なく「どうして人工のレンズを入れないんですか?」と言ったのにハッとして、眼内レンズを入れることを思いついたそうです。

 
血液をジェル状に固めるタイプ/浸出液を吸収して、傷口を保護するタイプ
 

ときは1949年、第二次世界大戦が終わってまもなくの頃でした。当時、戦場で負傷し、操縦席の風よけの覆いの破片を目の中に浴びてしまったパイロットの治療を行っていて「この破片は、時間が経っても組織が異物反応を起こさない」と不思議に思っていたこともあり、その素材「PMMA(ポリメチルメタクリレート)」で眼内レンズを作ることを思いついたといわれています。

――「眼内レンズ」が開発されたことで白内障になっても失明しなくてよくなったのは、とても画期的なことだったでしょうね。


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