自分の歯で噛み続けられることは、長寿の秘訣。厚生労働省や歯科医師会により「80歳で20本の自分の歯を残そう」と「8020(ハチマル二マル)運動」という取り組みも行われておる。そのため、万が一むし歯になっても、できるだけ削る部分を少なくして自分の歯を残す治療が主流となっている。そのための治療で使う「穴に詰めるレジン」や「むし歯を削る機器」などについて最新情報を耳にしたので、ちょっと説明してみよう。
(2012年1月24日掲載)
むし歯の治療を受けたことのない人、詰め物、かぶせ物をしたことのない人はまずいないのではないかな?むし歯ができてしまったら、下の図の通り、むし歯菌に冒された部分を削り、詰め物をして、元の歯の形にする。
皆さんもちょっと自分の口の中について考えてみてほしい。むし歯の治療をしたのはいつだったかな?そのとき詰めたりかぶせたりしたものは、今も口の中で歯の代わりになって働いているだろう。熱いもの、冷たいもの、固いもの、ネバネバしたものなどいろんなものを食べ、噛んでいても歯からはずれることなく健気に働いている。そう、むし歯の治療に使う詰め物は、口の中の過酷な環境にも耐えられる素材が選ばれているのじゃ。
詰め物には以下のような性質が求められているそうだ。
1)口腔内に置いても安全であるもの
2)熱いもの、冷たいもの、硬いもの、柔らかいものなどを噛むという過酷な環境に耐えられること
3)適度な強度があり、長期間にわたって壊れてしまわないこと、など
さて、おもしろいものを見せてもらったよ。なんと、木製の入れ歯じゃ。現存する最古のものは江戸時代の尼僧のもので、ツゲの木で作った土台に、象牙の歯を並べたものだ。当時は「象牙」が歯の代わりに使われていたのだね。外国の入れ歯には開閉のバネがついたものもあったそうだよ。
その後、詰め物の主な材料は金属やセメント、入れ歯用の歯は陶器へと変わり、戦後はアクリル樹脂などのプラスチックが使われるようになったが、プラスチックだけだと摩耗しやすいため、石英の粉を混ぜ合わせて強くした「コンポジットレジン」と呼ぶ素材が使われるようになった。その「レジン」も、より人間の歯に近づけるために絶えず開発が続けられている。
日本発の技術で誇るべきものは「接着剤の開発」だそうだ。レジンは水をはじく素材のため、それを歯にぴったりとくっつけるには安全で強力な接着剤が必要なのだ。接着力が弱ければ、ものを食べている間に詰め物が取れてしまうこともあるね。金属をかぶせるときは、金属の冠がはずれないようにするために接合部を削る必要もあった。しかし、接着剤の開発により詰め物が取れてしまうことが減り、また、削る部分を最小限にすることができるようになったことで、自分の歯を残す割合が増えたのじゃ。また、変色してしまった歯の上に、薄くて美しい歯を貼るなどの審美的な治療も可能になったのだよ。この接着技術は今では世界中に広がっている。
そして今は、治療だけでなく「予防」のための詰め物も誕生している。それは、歯磨き粉に含まれるフッ素などのイオンを取り込み、放出することで歯を守る「詰め物」だ。万が一削って詰めることになってしまっても、ただ隙間を埋めるだけでなく、より長く自分の歯を守るために有効な働きをするものだ。流れは「予防」へ。歯の健康が全身の健康へとつながっていくだろう。









