私たちの暮らしと医療機器 日本医療機器産業連合会スペシャルコンテンツ
第3回 PAGE1
心臓を動かす電気の力――除細動器・心電計・ベッドサイドモニター
2006年5月10日掲載 

私たちの心臓は「電気の力」によって規則正しく動いていることをご存知ですか? 電気の送られ方が不規則になったり、乱れたりすると心臓がうまく動かなくなるのだそうです。テレビの医療ドラマでも、意識を失った人の胸に体外パドルをあてて電気ショックを与えるシーンをよく見かけますね。その機器は、乱れたリズムを電気の力で規則正しい動きに戻すための機器「除細動器」だそうです。除細動器を誰でも使えるようにした「AED」が、最近、鉄道の駅にも設置されるようになったと聞いて、除細動器やAED、心電計などについて(社)電子情報技術産業協会・医用電子システム事業委員会の方にお聞きしました。

いき・れん君の画像

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全身に血液を送り出す心臓

血液の流れ――心臓は、全身に新鮮な血液を送り出すポンプの働きをしていると習いました。

そうです。全身を巡った血液は、まず心臓の右心房〜右心室を経て肺に送られ、そこで新鮮な酸素を補給した後、再び心臓に戻り、左心房〜左心室から全身へと送り出されます。血液がからだのすみずみまで循環できるのは心臓のポンプの力で力強く押し出されるからです。胸に手を当ててみると心臓が規則正しく鼓動しているのがわかりますね。この「規則正しさ」を司っているのが「電気の力」なのですよ。

心臓の興奮の伝達――発電機があるのですか?

えぇ。人間のからだの細胞は「イオンの力」で電気を起こすのですが、右心房の上の方に「洞結節」という細胞群があり、そこが「発電機」の役目を持っています。ここで起きた興奮がまず房室結節に伝わり、さらに左右の心室へと伝わることで、心房と心室が順番に収縮してポンプのように働きます。健康な人では、1分間に50〜80回程度で規則正しく収縮していますが、何らかの原因で1分間に150回という「頻脈」や、50回以下という「徐脈」を起すことがあります。また、脈が不規則になったりすることもあり、これを「不整脈」と呼びます。すると、心臓が全身に血液をうまく送り出すことができなくなるので、動悸やめまい、息切れなどを引き起こしてしまいます。重度のときは死に至ってしまいます。


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心臓がけいれんを起こしたとき治療する機器

心室細動

心室が1分間に300回もの激しい「けいれん」を起すこともあります。それを「心室細動」と呼びますが、心室がブルブルと震えるだけで血液を送り出すことができなくなるため、3〜5秒で意識を失い、呼吸が停止します。そして脳に血液が届かなくなり、死に至ってしまうという恐ろしい病気です。けいれんを止め、規則正しい心臓の動きに戻すには「除細動器」という医療機器で電気ショックを与えます。テレビの医療ドラマでもよく見られる、医師が患者さんの胸にパドルをあてているのが「除細動器」です。心室細動は除細動器でしか治せません。

――とても緊迫したシーンで出てくる機器ですね。

JR御茶ノ水駅に設置されたAED

そうですね。脳に血液が届かなくなる時間が長くなると蘇生率が下がってしまいますから、一刻も早い治療が必要で、心室細動が起きたら10分以内に適切な対処を行わなくてはいけないのです。ですから、救急車にはたいてい除細動器が備えつけられています。しかし、救急車を呼んでいる間にも時間は過ぎて行きますから、公共の場に「誰でも使える除細動器」が設置されているといいですよね。それが「AED(自動体外式除細動器)」で、日本では2004年7月から「AEDを一般の人が使っても良い」ことになりました。JRの駅に設置されたことがニュースにもなっています。愛知万博の会場にも設置され、AEDによって一命を取り留めた方が何名かいます。

――それは、私でも使えるということですか?

はい。AEDは高い電圧の電気を流すのですが、電極を胸につけると自動的に心臓の動きを検知し、「電気を流すべきかどうか」判断するようになっています。心臓が正しく動いている場合には電気が流れないしくみですし、音声で指示してくれますので、誰でも使うことができるのですよ。もし、意識を失って倒れた人がいたら、AEDを使ってください。

AEDの使い方

――今まで病院の中にしかなかった医療機器が、街の中にも設置されるようになり、私たちにとって身近な存在になってきたのですね。

病院で活躍している除細動器

このように除細動器を誰でも使えるかたちにできたのは、高電圧を生み出すしくみを小型化したり、心電図を測り判断するプログラムを搭載するなど、技術の発展があったからです。また、心室細動を起す原因の最も一般的なものは、心臓の冠動脈疾患による心筋への血流不足(急性心筋梗塞に至る恐れのある心筋虚血の状態)と言われていますから、心室細動からの回復に成功しても、根本的な疾患を治療しなければ再び発作を起こす危険性がありますね。発作が起きるたびに電気ショックを与える必要がある方には、小さな除細動器をからだに埋めこむこともあります。その機器の中にも心電図を測って判断するプログラムが入っているのですよ。

――急性心筋梗塞は日本人の三大疾病のひとつですから、急に倒れた人を救うためにもAEDが多くの場所に設置されるといいですね。


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