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第4回
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体内の粘膜を直接見て治療する--消火器内視鏡
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正確に「診断」し、すばやく「治療」する

内視鏡システムは、からだの中に挿入する「スコープ」部分と、スコープから送られてきた電気信号を画像信号に変換してモニターに映し出す「ビデオシステム本体」で構成されています。スコープは適度なしなやかさを持ち、操作部のノブを回すことによりで挿入部の先端を上下左右に湾曲させることで胃や腸等の内壁をくまなく観察することができます。巧みに操作をして、食道や胃の粘膜をすべてチェックするのにわずか5分で終える医師もいるようです。

――「正確な診断」のために内視鏡でくまなく観察するのですね。

はい。現在は胃や腸だけでなく、下の図のように体のあらゆるところで用いられるようになってきました。例えば、膀胱腫瘍では膀胱尿道鏡が、水頭症では脳内用スコープが、膝関節の障害では関節鏡が、胆嚢摘出では腹腔鏡が用いられることがあります。内視鏡は使用する部位ごと、また使用目的ごとに非常に多くの種類があり、太さや長さ、硬さ、形もさまざまです。また、「見る」だけでなく「治療」も行うことができるのですよ。

さまざまな内視鏡

先端部の仕組み

内視鏡の先端部を見てください(右図)。4つの円が見えますね。真っ暗な消化管内部を照らし出すためのライトが2つ、対象を捉えるレンズが1つ、そしてもう1つは治療を行うための「鉗子口(かんしこう)」です。この鉗子口は直径わずか2〜3ミリですが、ここから小さな器具を出して、外から操作をし、患部を切除したり、止血をしたり、結石を砕くなどの様々な処置を行うのです。

――この小さな穴に器具が入るのですか?

そうです。用途に応じて様々な器具がありますよ。
・生体組織を採取する器具
・異物を摘出する器具
・止血する器具
・組織を切除する器具
・石を採取したり、破砕する器具
などがあります。
さまざまな処置具

 
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開腹せずに治療でき、からだへの負担が少ない

 

ポリープなどの突起物の切除だけでなく、まだ盛り上がっていない組織でも、組織下に生理食塩水を注入することで盛り上げて、病巣部分を切除する方法もあります。中でも「早期がんをより的確に、完全に、一括切除する」ことをめざした 「内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection : EMR)」は、開腹手術をしなくても早期がんを切除する処置法として脚光を浴びています。それは、病変がまだ粘膜層内に留まり、リンパ節に転移していない早期胃がんなどが対象となり、内視鏡を使って粘膜の下層に障害を与えずに粘膜層だけを切除し、組織を回収する方法です。さらに、より広範囲の病変を内視鏡で切除する「内視鏡的粘膜下層剥離術 (Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)」によって、胃がんの早期発見、早期治療に貢献しています。
EMRの手技

――お医者さんの優れた「マジックハンド」みたいですね!

まさに「お医者さんの手」のような働きをします。内視鏡がなかった時代は、X線検査でポリープなどの突起物を発見すると、開腹手術をして突起物を切除していました。たとえ良性のものであっても「大手術」が必要で患者さまにも大きな負担を強い、術後の生活にも大きな影響を与えるものでした。内視鏡により病変部分を直接見ることができ、また組織を採取して良性か悪性かの判断をしたり、すぐに切除したりできるようになったことで、患者さまへの負担が大きく減り、術後のQOL(生活の質)の向上に大きく役立っています。


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