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第4回 PAGE1
体内の粘膜を直接見て治療する--消火器内視鏡
2006年7月21日掲載 

胃腸や食道などのような「管」のかたちをした臓器では、病気が発生すると、まず内側の粘膜の色が変化するそうです。また、粘膜組織が盛り上がってきてポリープや腫瘍へと変化したり、病変が粘膜へ深く浸潤することもあるため、できれば初期の段階で発見して治療することが望ましいとか。その「早期発見・早期治療」において大活躍しているのが「内視鏡」という医療機器だそうです。その「内視鏡」について、日本医用光学機器工業会(日医光)の方に詳しく伺いました。

いき・れん君の画像

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胃や腸の粘膜を直接見ることができる機器

――内視鏡でどうやって体内の粘膜の状態を見るのですか?

内視鏡のしくみ

内視鏡には対象となる臓器によってさまざまな種類がありますが、ここでは胃腸等を見るための消化器内視鏡を例にあげて説明しますね。消化器内視鏡は細くしなやかなケーブルの先端にレンズがついているもので、それを口から胃の中に挿入して、レンズを通してキャッチした光をCCD(光の量を電気信号に変換する撮像素子)により電気信号に変え、電線を通して外部の機械に送って画像信号に変換してモニターに映し出します。わずかな色の変化も映し出すことができるので、医師はどこが病変部なのかをリアルタイムで見ることができるのです。消化器内視鏡は消化管の表面を直接見ることができる唯一の医療機器です。

――もう「胃カメラ」とは言わないんだそうですね。

そうですよ。1950〜60年代は実際に機器の先端に小さなカメラがついていたので「胃カメラ」と呼んでいましたが、現在の機器にはカメラはついていないので、内部を視るレンズ、「内視鏡」と呼びます。でも「胃カメラ」と呼ぶ方がピンと来る方が多いかもしれませんね。日本人は消化器系の疾病にかかることが多いと言われているので内視鏡検査を経験した方は多いと思います。

――当初はカメラが本当についていたのですね?!

ガストロカメラ

はい。「胃の中の状態を、手術で切開する前に直接目で見たい」という医師の熱意と、日本の光学機器メーカーの努力とで、1950(昭和25)年、先端に小さなカメラのついた「ガストロカメラ」という胃カメラが誕生しました。それまで欧米でも胃の中を直接見ようとさまざまな機器が生み出されてきましたが、「胃カメラ」として実際に医療に役立つものを開発したのは日本が初めてです。フィルムは白黒で幅わずか6ミリ、手元の操作部で豆ランプを光らせて撮影するというものでした。

「器具を使ってからだの中を直接見たい」という医師は古代ギリシア・ローマ時代からいたそうですよ。紀元1世紀のポンペイの遺跡からも内視鏡のような器具が発掘されています。直接体内に管を通して観察してみようとしたのは、ボチニという人で1805年に導光器という器具を作り、尿道や直腸、咽頭の観察を行っています。クスマウルというドイツの医師が、剣を飲み込む大道芸人の口から太い器具を挿入して、初めて生きている人の胃の中を覗き見ました。胃カメラは1898年にドイツのランゲとメルチングにより開発が試みられたのですが、実用化にはいたりませんでした。

――1950年に日本で開発された胃カメラが初めて実用レベルのものだったのですね。

そうです。胃カメラの実用化やX線技術の発展等により、診療技術が大幅に向上し、胃がんの早期発見に大きく貢献するようになったのです。

 

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ファイバースコープからビデオスコープへ

ファイバースコープ

そして、1960年代に入ってアメリカで開発された新素材「グラスファイバー」が「胃カメラから内視鏡」へと大きな飛躍を促しました。グラスファイバーというのは、光の屈折率の違いを利用して、細いガラスの管の中に光を通す繊維です。皆さんもクリスマスツリーなどで、先端からキラキラと光を出す透明の管をご覧になったことがあると思います。グラスファイバーは曲がっていても先端まで光が届くので、胃の中に挿入して直接粘膜を覗き見ることができるようになりました。これを「ファイバースコープ」と呼びます。しかし、一つのファインダーから覗くため、1人の医師だけしか観察することできませんでした。

――今は同時に複数の人が見ることができるのですか?

ビデオスコープ

そうです。実際に内視鏡検査を受けた方はモニターに映ったご自身の食道や胃の内壁の様子をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか?1980年代に登場した「ビデオスコープ」は、レンズがとらえた画像を直接見るのではなく、一旦CCDにより電気信号に変えて、その信号を外の機械に送り出し、画像信号に変換をしてモニターに映すため、複数の医師や医療従事者が同時に見ることができるのです。また画像処理により撮像対象の先鋭度を高めたり、拡大することもできるようになり、肉眼では見えにくい部分の観察が可能になりました。そのことで病変部分の見落とし減少、診断の精度向上に貢献しています。

デジタルカメラのCCDは約10年くらいの間に数十万画素から800万画素以上へと高解像度化しましたね。内視鏡もCCDや画像処理の技術の発展に伴い、飛躍的に高画質化しています。モニターの走査線を大幅に増やし、高画質CCDと組み合わせて高精細な画像を描き出す「ハイビジョン内視鏡」も生まれ、従来の方式ではとらえることが困難だった微細な粘膜構造の変化を映し出すこともできるようになりました。本当の生体の色を忠実にモニターで再現するための技術開発に一番力を注いでいるのです。


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