会長挨拶Message

新年のご挨拶

一般社団法人
日本医療機器産業連合会

会長三村  孝仁

 

みなさん、新年あけましておめでとうございます。

早いもので新型コロナウイルスの感染拡大から3回目の新年を迎えることになりました。感染者数はいまだ高止まりしていますが、新たなワクチンや治療薬の開発が進み、国民のコロナに対する意識の変化も感じ取れます。昨年の今頃と比較すると、徐々に日常を取り戻しつつあるのではないでしょうか。

しかし、ようやく世界が落ち着きを見せ始めた矢先に起こったロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、これまでの法の支配による国際秩序を大きく揺さぶり、世界経済を混乱の渦に陥れています。我々医療機器業界も、一昨年から続く、原材料・部材の入手難と価格高騰はさらに悪化の一途をたどっており、さらに歴史的な円安による影響が企業収益を蝕み始めています。我々は再び、新たな試練と対峙することになったと言えます。

コロナ発生以来今日に至るまで、我々は、医療の安全保障を守るために、必要な医療機器・資材の安定供給確保に全力で取り組んで参りました。しかし、企業努力だけではいかんともしがたく、昨年は、行政ならびに国会議員の先生方へも窮状を訴えるとともに、診療報酬上の対応も含めた支援要請を行ってきました。今年は2024年度診療報酬改定に向けて大事な一年となりますので、課題解決に向けてより一層取り組んで参りたいと思います。

 さて、ここ最近の不穏な世界情勢は、我々の安全保障に対する感度を高めています。医療を含めた国の安全保障に対し、これほど国民が関心を持つことはこれまで無かったのではないでしょうか。国として経済安全保障の強化や防衛力を高めることも当然大事ですが、国力を強化するには、最後はその国の民力をいかに高められるかに掛っていると考えます。国民一人一人が個としての力を少しずつでも高めることで、国全体の経済力が回復し、ひいては安全保障の強化にもつながっていきます。

国としては、岸田政権が掲げる成長戦略である「新しい資本主義」の中で、人への投資を柱の一つに掲げています。人への投資を企業経営の中核に据え、リスキリングへの取り組みを進めていくよう、産業界に投げかけられています。かつて多くの企業では「人はコスト」との前提で経営が行われてきたと思います。確かに会計上は販管費や売上原価など費用の項目には人件費が大きな部分を占め、バランスシートの資産にも資本にも人の価値の明確な指標を示すことができません。しかし最近では、人的資本への投資停滞が労働市場の流動性を妨げ、賃金増を抑え、今日のデフレ長期化につながる一因となったとの見方が出始めています。また、人の価値を可視化する「人財計算式」を公表する企業も現れました。さらに2023年3月期決算以降の有価証券報告書には、人材投資額などの情報記載が求められるなど、人はコストでは無く「付加価値を生み出す資本」であるとの考え方が広がり始めています。我々医療機器産業もデジタル化の流れや再生・細胞治療、創薬等との融合など、新たなテクノロジーの取り込みや連携が避けられないことから、人材への投資、リスキリングは待ったなしであると思います。

  現在、100年に一度の危機であると言われていますが、過去の歴史を紐解くと、危機と進化はかなり連動していると言えます。米国金融危機の翌年にT型フォードの量産がはじまり、大恐慌の真っただ中で、今では当たり前となったナイロン繊維が開発され、リーマンショックで発生した空き部屋を貸し出すためにシェアエコノミーが生み出されるなど、危機から生まれた新たなイノベーションが、国を救い、世界経済を再び成長軌道へと導いてきました。それらイノベーションを起こすのは国ではなく、企業を構成する個の力に他なりません。繰り返しになりますが、国力を高めるのも、企業の力を高めるのも、ベースは「人」の力です。先行きが不透明なこのような時期だからこそ、国も企業も人的投資を怠らず足腰を強固にすることで、危機からイノベーションを生み出す原動力につなげていくことが大切だと思います。医機連としても会員各位と共に、この危機をばねに新たなイノベーションへつなげ、医療の安全保障へ貢献するとともに経済成長の牽引役となれるよう取り組んで参りますので、今年も引き続き、医機連の活動へご支援、ご協力を宜しくお願い申し上げます。